ベンチャーとして数人でスタートした組織も、人数規模が増えていく各成長フェーズに応じて、乗り越えるべき問題が存在すると言われています。それが10人の壁、30人の壁、100人の壁と言われるものです。それぞれ、創業期から拡大期、拡大期から組織化期、組織化期から最適化期にあてはまります。今回の記事では30人の壁、つまり拡大期にいる企業が組織作りの段階に進む際に躓くポイントと、それを乗り越えるために必要な基本情報をお伝えさせていただきます。
30人の壁を越える!ベンチャーの組織作り~入門編~
ベンチャーが組織作りをする際に生じる3つの変化
それまでは経営者一人で、社員の業務の状況や、仕事における悩みや不満・要望などを把握できました。しかし、人数が増えてくると人数に比例して社員のマネジメントに割く時間が増えていき、自分の業務に割ける時間が減っていきます。当然、全員の状況を以前ほど正確に把握することも難しくなります。そこで、経営者は自分に代わるマネージャーのポジションを作り、部署を設置するなどの対策を始めていきます。
ただ、今まで組織としての活動というよりは、経営者自らが率いる1チームという形で活動していたため、組織作りに踏み切ることで以下の3つの変化が生じます。
コミュニケーション不足
従来と比べると経営者が社員と過ごす時間も減ります。また、社員同士でもチームが異なるとコミュニケーションを取る機会が減っていきます。規模が大きくなりチームとして細分化されていくと避けられない問題です。
トップダウン化
組織作りをしていくと、どうしても経営者の考えは直接社員に伝えられるわけではなく、マネージャーを通して部下に伝わるような伝達経路に変化します。従来と比べると下からの意見もマネージャーを通すようになるため、なかなか経営者に上がりにくくなり、結果としてトップダウンの組織体制になりがちです。
マネジメント上の問題の増加
各部署を設置し、チームとして細分化していくと、当然各部署を束ねるマネージャー層が必要となってきます。創業期にプレイヤーとして活躍してきた人材が管理職に上がっていくケースが多いですが、マネジメントの経験が乏しいため、これまでになかったマネジメント上の問題が生じます。
3つの変化がもたらす問題とは?
これらの変化はベンチャーが組織化にするに伴い避けられない点です。そして、この組織作りをしようとしたときに生まれる変化がこれまでになかった問題を引き起こします。
では、いったいどんな問題なのでしょうか?
それは、社員の向いている方向がバラバラになるということです。
経営者との距離も遠くなれば、会社として目指しているゴールが見えにくくなります。それでも他のメンバーが行っている仕事がわかれば、自分のしている仕事が全体のどの部分を担っているのかもわかるかもしれません。ただ、チームごとに仕事が細分化され、経営者だけでなく、他の社員とのコミュニケーションも不足してくると、他の社員の仕事も把握できません。さらにトップダウン化によって細分化された仕事が上から降ってくる状況です。
今まで管理職をやったことのない不慣れなマネージャーにとっては、部下にどのように仕事を任せるのが良いのかわからずに対応してしまっているかもしれません。このような状態では社員は会社がどこを目指していて、その目標達成のために現在どの段階のどの部分の仕事を担っているかがわからず、ただ上から降ってきた仕事をするだけになってしまい、何を見て仕事をするのか、その基準は人それぞれになってしまいます。
社員が同じ方向を向くために
ではどうすればこの30人の壁は乗り越えられるのでしょうか?コミュニケーションが不足し、トップダウン化し、マネジメント上の問題が増えていくことで、社員は何を基準にしたらいいかがわからなくなり、バラバラになってしまいます。ここからはそれらの変化に耐え、社員が同じ方向を向いてパフォーマンスを上げあられる組織をつくるヒントをご紹介していきます。
自社の存在意義について共通認識を持つ
社員を結束させ、高いパフォーマンスを生み出すのに必要となってくるのが、組織体としてどうありたいか・どうなりたいかという目的・ビジョンです。
有名なたとえ話がありますので簡単にご紹介させていただきます。
「3人のレンガ積み職人」(抜粋)
レンガを積み上げている3人のレンガ積み職人に旅人が「何をしているのか?」と尋ねました。 1人目は「見ての通り、レンガを積んでいる」とつまらなさそうに答えました。 2人目は「壁を作っている。これが俺の仕事でね。」と無表情で答えました。 3人目は「歴史に残る偉大な大聖堂を作っている」と活き活きと答えました。
社員の状態として目指したい状態はやはり3人目のレンガ積み職人ではないでしょうか? 1人目・2人目は、社員が「これは仕事だ」と割り切って目の前の仕事を片付けている状態といえます。それでは社員のモチベーションは上がりませんし、パフォーマンスも上がりません。 3人目の特徴は「自分の仕事が何につながっているのか、どんな価値があるのか」という目的が明確にあることです。社員全員が共通して自社の存在意義を理解し、将来あるべきビジョンを明確に思い描くことができれば、パフォーマンスを発揮するのではないでしょうか。
7年連続ベストカンパニーに選出され、2017年には「ベストモチベーションカンパニーアワード」で1位を獲得した株式会社LIFULLの人事を率いた人事部長 羽田幸広さんも共通のゴールを持つ重要性について言及されています。著書である**「日本一働きたい会社の作り方」**では
組織が目指すものとその理由を共有し、その一点に対し、ブレることなく全力を出し切れることが大事である
と書かれています。
理念から一貫したマネジメントをする
自社の存在意義について共通認識を持つことこそ30人の壁を乗り越える上で重要であることをお伝えしました。そしてこの自社の存在意義こそが経営理念です。経営理念とは、なんのために、誰のために、なぜこの会社は存在するのかという経営目的を明文化したものです。経営理念の設計方法に関してはまた別の記事で詳しくお伝えしますが、その経営理念に基づき、組織が実現したいビジョンを設定し、何をいつまでに実現するかという会社の具体的な目標を設定し、その目標を達成するための計画を立て、実行に移していくという一貫性が大切です。
これまで経営者が一人で行ってきたマネジメントを代行し、その思いを理解して伝達する役割を持っているのがマネージャーです。役職とメンバーを与えるだけではなく、理念・ビジョン・目標・計画を共に考え共に創るまさに分身をつくっていくことが、30人の壁を越え、社員をひとつにまとめていくためには欠かせません。
まとめ
ベンチャーにとって、規模を拡大するにあたっての組織作りは避けて通れません。そして、組織作りに踏み切ると従来では発生しなかったコミュニケーション不足やトップダウン化、マネジメント上の問題の増加というような変化が生じます。しかし、ここでブレない軸があり、それが社員に浸透されている組織はとても強いのです。つまり、マネージャーを筆頭に、社員が共通認識として、自社の存在意義を理解し、自分の仕事の意味や価値を理解している組織です。そして、そのような組織作りをする段階で、マネージャーと共に創っていくことが30人の壁もしっかりと乗り越えていく上では大切なポイントです。
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