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自律型人財が育つ組織とは?育成までの7つのステップと注意点

自律型人財が育つ組織とは?育成までの7つのステップと注意点

ビジネス環境が目まぐるしく変化する中、それに対応する存在として自律型人財・自立型組織が注目されています。自律型人財が育つと、意思決定やプロジェクトを進めるスピードが上がるなど、企業にはさまざまなメリットが生じます。ただし、育成環境の構築には手間やコストがかかります。綿密な計画が必要になるため、自律型人財育成の土台を作りたい企業は、本記事で具体的なステップや注意点を押さえましょう。

この記事のまとめ

  • 自律型人財とは、自らの価値観や意志にもとづいて何をすべきか考え、主体的に業務を遂行していくことができる人財のことである。
  • 自律型人財が育つ組織には、求める人財像が明確に定義されて組織内で共有されていることと、言動が制限されず萎縮せずに挑戦できる風土が整っているという特徴がある。
  • 自律型人財の育成にあたっては、研修内容や人事評価制度はもちろん、企業によっては経営戦略や理念、ビジョンを見直していく必要がある。
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自律型人財とは

自律型人財とは、自身の価値観や信条に基づく形で、主体的に必要な業務を判断・遂行する人財です。簡単に言い換えると、会社が求めた役割を自らこなす人財であり、細かい指示がなくてもやるべき業務を見つけ出して行動を起こします。

「自律型人財」とは、自分自身の価値観や信条・意志に基づいて、何をすべきかを考え判断・行動して、業務を主体的に遂行していける人財を意味する。上司からの細かな指示を待つのではなく、自主的に取り組み、成果を導くことができるのが特徴だ1

自律型人財に明確な定義はなく、求められるスキルも企業によって異なります。どのような人財なのかをイメージできるように、以下では主な特徴をまとめました。

自律型人財の特徴

  • 自身の役割や立場を理解し、やるべき業務を判断して行動を起こす
  • 会社のビジョンや経営戦略を理解している
  • 上層部や上司などの指示が必要ない
  • 自身の判断や行動を成果につなげる
  • 強いリーダーシップを発揮する

上記の他にも、責任感を持って業務にあたる点や、周りに流されにくい強い意思や信条がある点も自律型人財の特徴です。

自立や自主性との違い

ビジネスシーンにおける「自律」の意味合いは、単なる自立や自主性とは異なります。

自立とは、他者からの援助を受けずに自力で物事をこなすことです。

「自立」とは、「他の援助を受けずに自分の力で身を立てること」の意味であるが、福祉分野では、人権意識の高まりやノーマライゼーションの思想の普及を背景として、「自己決定に基づいて主体的な生活を営むこと」、「障害を持っていてもその能力を活用して社会活動に参加すること」の意味としても用いられている2

また、自主性は他者が決めたやるべきことに対して、自ら取り組む性質を意味します。

自主性とは、「自らが率先して行動を起こす」ということです。やらなければいけないことを、人から指示を受ける前に素早く行動に移すことを、自主性と言います。つまり、「やるべきことを誰かに言われる前にやること」が出来る人のことを自主性のある人と言います3

一方で、自律型人財は他者から強制されることなく、やるべきことを自ら判断し、行動に移す人財を指します。自身の役割や目的を理解した上で、今こなすべき業務や目標を設定できるため、上司などからの細かい指示が必要ありません。

自律型人財・自立型組織が注目される背景

世の中の企業は、どのような課題を改善するために自律型人財・自律型組織の育成を目指しているのでしょうか。ここからは、「自律」という考え方が注目される3つの背景を紹介します。

スピード感のある企業活動が必要になった

現代のビジネス環境は状況が目まぐるしく変化し、将来の予測が難しい「VUCAの時代(※)」に突入したといわれています。環境変化に対応できない企業は、ビジネスモデルや技術が時代遅れになり、最終的には競争力を失う恐れがあります。

このような時代で企業が生き残るには、柔軟性やスピード感のある組織づくりが必要です。そのためには、自らの意思で判断・行動をする人財を増やさなければなりません。

(※)「Volatility(変動性)/Uncertainty(不確実性)/Complexity(複雑性)/Ambiguity(曖昧性)」の頭文字を取った言葉。現代のビジネス環境や世界情勢を表しており、日本では「ブーカ」と呼ばれる。

働き方の多様化で管理が難しくなった

テレワークやフルフレックス制の導入など、働き方の多様化も自律型人財が注目される要因です。

日本では新型コロナウイルスの影響により、2020年頃から在宅勤務やリモートワークの導入例4が増えました。これらの施策は感染拡大を防ぐ一方で、人財教育や勤怠管理を難しくさせるといった問題も引き起こしています。

就業状況の管理が難しい状況では、一人ひとりが主体的に動けるような組織づくりが必要です。細かい指示や監視を必要としない自律型人財を増やすことで、働き方が多様化しても高い生産性を維持しやすくなります。

ジョブ型雇用の増加

ジョブ型雇用とは、業務内容を定義または特定した上で、必要な能力や経験を有する人財を採用する手法です。これまでの日本では、配置転換をしながら経験を積ませるメンバーシップ型雇用が主流でしたが、市場の成熟化に伴って専門性に着目したジョブ型雇用が注目され始めました。

ジョブ型雇用で求められるスキルは、特化型または専門的なものが中心です。企業側がすべてを教え込むことは難しいため、必要な知識やスキルを自ら判断し、自己研鑽によって習得できる自律型人財が求められています。

自律型人財を育成する7つのステップ

自律型人財を社内で育成するには、どのように環境整備をすればよいのでしょうか。実際の流れは企業によって異なりますが、以下では一例として自律型人財の育成方法を紹介します。

ステップ1.自社に合った自律型人財を定義する

自律型人財に求められる能力は、業種や業態、業務内容などによって変わります。そのため、まずは自社が望んでいる自律型人財を定義し、必要な能力を整理しなければなりません。自社に合った自律型人財を定義する方法は、大きく以下の2つに分けられます。

1.経営戦略から人物像を定義する

経営戦略の内容から「どのような業務をこなしてほしいのか」を考える方法です。求めている具体的な動きが明確になれば、そのために必要な知識やスキルも把握できるので、理想の人物像を定義しやすくなります。

2.社内の自律型人財をモデルにする

すでに社内で活躍している自律型人財をモデルにし、その人財の行動パターンや能力を分析する方法です。分析結果を人財育成の項目に落とし込むことで、自社の求める人物像が明確になります。

いずれの方法を選ぶ場合でも、求めている行動をできるだけ具体化し、それを基準に必要な能力を定義することが重要です。また、自律型人財はすぐに育つものではないため、長期的な視点も忘れないようにしましょう。

ステップ2.主体的な行動を促す風土づくりを始める

自律型人財を育てるには、主体的な行動を促す風土づくりが必要です。育成制度を用意しても、言動に制限がかかったり、上司に委縮したりする環境では、一人ひとりの行動を促せません。気兼ねなく挑戦できる環境を整えるには、失敗を責めないといった会社全体の意識改革から取り組む必要があります。また、各々の役割を見直して、以下のような新しい組織を目指す方法もひとつの選択肢でしょう。

ホラクラシー組織

階級や役職を撤廃し、一人ひとりの従業員に意思決定の権限などを与える組織です。基本的には「サークル」と呼ばれるチームを結成し、事前に決めた規則(ルール)に従って各サークルが活動を行います。目的によっては、サークル内に管理者や管理役が設置されることもあります。

ティール組織

組織に属するすべての従業員が、個別に意思決定や行動をする組織です。ホラクラシー組織のような規則がないため、より主体性のある判断・行動が求められます。

上記のようなフラットな組織は、会社全体と個人の方向性を一致させることが必要です。チーム力やまとまりが失われる可能性もあるので、導入は慎重に検討してください。

ステップ3.目標を設定する

次はステップ1で定義した内容に合わせて、以下のように具体的な目標を考えます。

  • どのスキルを習得すべきか
  • どの程度まで各スキルを向上させるか
  • どのような行動パターンを求めるか

各目標を達成するには、従業員本人の意思も尊重することが重要です。上層部の要望を押しつけると、主体的な自己研さんや行動は難しくなるので、必要に応じて十分な対話を重ねましょう。

ステップ4.人事評価制度を見直す

自律型人財の育成では、人事評価制度の見直しも同時に進めなければなりません。求める人物像と人事評価制度の間にズレがあると適正な評価が難しくなり、それによって従業員のモチベーションを削いでしまう恐れがあるからです。

そのため、定義した自律型人財の要件と人事評価制度の項目は、きちんと見比べる必要があります。主体性を促したい場合は、業務に取り組む姿勢や意欲などを評価項目に取り入れると有効です。

ステップ5.上層部からメッセージを発信する

自律型人財の定義は企業によって異なるため、大まかな方針が決まったら周知をする必要があります。従業員が迷わないように、企業が理想とする姿をメッセージとして発信しましょう。

上層部の考えが伝わりづらい場合は、経営戦略や理念、ビジョンなどと紐づけるといった工夫が必要です。また、人財評価制度で重視する項目や理想の人物像を伝えておくと、従業員の目指すべき方向性がより明確になります。

ステップ6.実践を踏まえて研修内容を考える

上層部が理想の人物像を定義し、単に裁量権を与えるような方法では自律型人財の育成は難しいでしょう。従業員が不安を抱えずに行動をするためには、丁寧な研修を心がける必要があります。

土台となる知識・スキルの習得はもちろんですが、研修では自律型組織の在り方も伝えなければなりません。最終的には、上層部の意図を汲み取って主体的に行動をする人財が必要であり、かつ従業員本人の努力がないと習得できないスキルもあるからです。

また、習得した内容を行動へとつなげられるように、実践の場も用意しておきましょう。実践を踏まえて研修内容を組み立てると、即戦力となる自律型人財を育てやすくなります。

ステップ7.フィードバックを実施する

研修や実践の後には、従業員に自身の能力や成長を把握させるためにフィードバックを行います。また、プロジェクトや業務の区切りも、フィードバックをする貴重な機会になります。

失敗などのネガティブなフィードバックが見つかったら、反省を促して次の行動へとつなげましょう。ミスを責めるのではなく、従業員自らが改善策を考えて実行できるような仕組みにすると、失敗体験を通して主体性を鍛えられます。

また、従業員本人の自己肯定感や自信を強めるために、ポジティブなフィードバックも積極的に行うことが重要です。

自律型人財を育成する注意点

自律型人財の育成には、コスト面などのリスクもあります。また、従業員に負担がかかりすぎると、上司との関係性が悪化したり、離職者が増えたりするかもしれません。以下では、自律型人財の育成で特に注意したいポイントを紹介します。

環境構築に手間とコストがかかる

ここまで解説したように、自律型人財を育てるには研修内容や人事評価制度などの見直しが必須です。企業によっては体制を大きく変更することになるため、ある程度の手間がかかる点は覚悟しなければなりません。また、新たな研修を実施したり、多少の失敗を許容したりする環境整備を考えると、想像以上にコストがかさむ可能性も考えられます。途中での計画変更を余儀なくされれば、さらに大きな手間がかかるでしょう。想定外の状況にも対応できるように、環境整備にかかる手間やコストを細かく予測し、十分な労力や予算を確保しておく必要があります。

従業員側のメリットも意識する必要がある

自律型人財の育成において「従業員側のメリット」は見落としがちなポイントです。理想の人物像や必要なスキル、行動パターンなどは、いずれも企業側が求めているものなので、従業員のメリットに紐づけることが難しい傾向にあります。

このような悩みを抱えている企業様に向けて、アチーブメントHRソリューションズは教育モデルの資料をご用意しております。本資料では、自律型人財と組織のつながりを強化することを目的として、個人と組織がWin-Winの関係性を構築する方法や、教育的アプローチを含めた包括的な施策を紹介しています。

自律型人財の育成環境に興味がある企業様は、以下のページからぜひ資料をダウンロードいただき、お役立てください。

個人と組織のWin-Winを実現するキャリア開発の教育モデル

専門家も活用して自律型人財の育成環境を整えよう

ビジネス環境の変化が激しい時代だからこそ、近年では多くの企業が自律型人財に注目しています。しかし、その一方で育成環境の整備には時間がかかるため、必要な場面が訪れる前に施策を進めておくことが重要です。

研修内容や人事評価制度はもちろん、企業によっては経営戦略や理念、ビジョンなどを見直す必要性も出てくるでしょう。自社だけでの環境整備が難しい場合は、本記事で紹介した資料を活用したり、専門家に相談したりする方法も検討してください。

Footnotes

  1. HRプロ「「自律型人財」の定義や特徴とは? 育成のポイントやリコーの事例なども紹介」
  2. 厚生労働省「自立の概念等について」
  3. アチーブメントHRソリューションズ「主体性がない人の特徴とは?主体性を引き出すポイントを紹介」
  4. 総務省「令和3年版 情報通信白書|テレワークの実施状況」