自律型人材とは、自らの価値観や信条に則り、自ら物事を判断することができる人材のことです。少子高齢化や人口減少に伴う生産年齢人口の減少は、より深刻な問題になっており、今まで以上に個人が自分の行いを自らのコントロール下に置き、結果を出す力が求められています。そこで今回は、自律型人材に求められる能力から、自律型人材の強み、そして育成方法などをご紹介いたします。
自律型人材とは?特徴や強み、育成方法をご紹介
自律型人材とは
自律型人材とは、自らの価値観や信条に則り、自ら物事を判断することができる人材のことです。では、そもそも自律にはどのような意味があるのでしょうか。
‘じりつ‘という言葉は、「自律」と「自立」の2種類があり、それぞれ違う意味を持ちます。自律とは、価値観や信条の独り立ちのことです。そして、自律の対義語を「他律」といいます。他律は「自らの意思によらず、他からの命令、強制によって行動すること」を表します。一方で、自立は環境や他者に依存することなく、能力や経済力が独り立ちすることを表します。そして、自立の対義語は「依存」です。依存とは、「他に頼って存在、または生活すること」を表します。つまり、自律型人材とは「物事を自力で完遂できる人材」ではなく、「物事を自らの価値観や信条に沿って判断できる人材」のことを言います。
自律型人材の特徴
では、自律型人材と呼ばれる人には、どのような共通点が見られるのでしょうか。自律性の高い人材の特徴として、下記のようなものが挙げられます。
- 決断力や判断力がある
- 周りに流されない
- 責任感が強い
決断力や判断力がある
自律型人材は、自分の価値観や信条に則って物事の良し悪しを考えることができます。そのため、何かの決断や判断が求められる時にも、自分で考えて「何をすべきか」の答えを出すことができます。ですから、自律性が高い人材は、自律性が低い人材と比べて、決断力や判断力に優れていると言われています。
周りに流されない
自律型人材は、物事の判断軸として自身の価値観や信条が確立しています。ですから、集団で何かを決めるときにも、自分なりの意見を発信することができます。場の流れや雰囲気に任せて物事を判断するのではなく、納得できる答えを出すために、組織のメンバーと意見を交換することができます。
責任感が強い
自律型人材は、自分で考えて取るべき行動を決めます。そのため、自分が取った行動や遭遇した状況に対して、「自分が選択した」という認識を強く持っています。ですから、たとえ身の回りで不利益が生じたとしても、その不利益を自分の選択の結果として受け止め、「次に何をするべきか」「どうすれば状況を好転させられるか」を考えることができます。
自律型人材を育成するメリット
では、組織の中の多くの人達が自律型人材になることで、組織にはどのようなメリットをもたらすでしょうか。
自律型人材が増えることで、組織には「上司の負担が減る」「新しいアイデアが生まれやすい」「組織課題へのコミットメントが向上する」「生産性が高まる」、などのメリットがもたらされます。どうしてこのようなメリットが組織内で生まれるのか、一つずつ簡単に説明していきたいと思います。
上司の負担が減る
指示されたことだけをするマニュアル人間とは違い、自分が任された業務に対し、自ら試行錯誤しながら取り組む人たちが増えると、上司の負担が少なくなります。部下や新入社員に指示を与えることが仕事ではなく、彼らの成長を促すようなサポートに費やせる時間が増えるため、お互いの更なる成長に繋がるような関係性を築くことができるようにもなります。
新しいアイデアが生まれやすい
自律型人材の多い組織では、新しいアイデアが生まれやすいと考えられます。自律型人材が多いということは、社員それぞれが自分の考えをしっかりと持っているということです。そのため、新しい取り組みや問題の解決策を考える際に意見交換が盛んに行われ、新しいアイデアや発想が生まれやすくなります。
組織課題へのコミットメントが向上する
自律型人材が多い組織では、組織課題に対する各社員のコミットメントが高いと言われています。自律性が高い人材は、自分に関連する物事に責任感を抱きやすいため、組織で起こった問題を解決することにも責任感を発揮します。そして、組織の課題に対して「自分に何ができるか」を考え、すべきことを判断することができます。
生産性が高まる
自律型人材は、自分で考えて仕事をするため、受け身の姿勢を持った社員よりも仕事に対するモチベーションが高い傾向があります。ですから、自律型人材が多い組織では、社員の時間に対する活動量が高まり、生産性が高まります。
自律型人材の育成方法
では、このようなメリットのある自律型人材を育成するためには何が必要になるでしょうか?
自律型人材を育成するには、下記の5つのポイントが大切になります。
- 会社の理念と社員の志をつなぐ
- 責任のある仕事を任せる
- 指示ではなく情報が得られる環境づくり
- 心理的安全性の確保
- 社員の行動指針を定める
では、それぞれについて解説していきます。
会社の理念と社員の志をつなぐ
自律型人材を育成するためには、会社の掲げるビジョンや理念に、社員が強い親和性を感じていることが重要になります。組織がどこに向かって何を目指しているのかがわからないと、迷いや疑心が生まれ、正しい判断を下せなくなってしまうときが出てきてしまうからです。
具体的な施策に落とすには
企業と社員の高い親和性を生み出すために、理念浸透研修という方法があります。採用や育成の中で、その企業で働く目的を明確にし、帰属意識を醸成することで、新入社員や既存の社員が持つ規範やルールなどの価値観と、企業の持つ価値観のすり合わせの機会になります。また、従業員と企業の大切にしているもの・したいものが限りなく近く、そして目指す場所が同じなら、会社としての考え方や決断にも、共感するような従業員が増えるようになります。
責任のある仕事を任せる
自律性を高めるには、自分の判断力を強めるために、自ら考え行動する経験を積み重ねる事が大切になります。そして適切な判断を基に実際の行動を移すには、十分な情報を得られて、かつ業務を遂行できるほどの権限を与える必要があります。
具体的な施策に落とすには
例えば、リーダーシップ研修やセルフマネジメント研修があります。自分に合ったリーダーシップを見つけ、人(自分含む)を行動を管理するための技術を体感しながら学ぶことができます。また様々なワークを通して、組織の中で起こる多種多様な事象に対して自分が責任を取るというスタンスを確立していきます。さらに、自分だけでなく周りの人と協力して目標達成する上で大切になるコミュニケーションなども醸成することができます。
指示ではなく情報が得られる環境づくり
自律性の低い部下や新入社員に対しては、特に1-10まで指示を与えてしまいたくなりがちですが、指示を与えるのではなく、情報を与えるようなマネジメントを意識してみると、部下や新入社員の自律性を促せるかもしれません。そのような機会があればあるほど、自らの自律性を沢山訓練することができるので、成長の促進に繋がるのです。
具体的な施策に落とすには
例えば、新入社員研修や新入社員フォロー研修などがあります。働く目的を明確にし、自己成長に対する意欲を醸成することで、指示を与える回数が減ってきます。また、どれだけ素晴らしい学びを体験しても、1度だけでは体に染みつくような行動にはなりません。繰り返し学び振り返りを行う事で、少しずつ身に着けるために、新入社員のフォロー研修が最近注目されています。またマネジメント研修では、部下の「目標達成」と「育成」の技術を学ぶことが出来るので、より効果的なコミュニケーションスキルを得る事が出来ます。
心理的安全性の確保
心理的安全性とは、「他者の反応に怯えたり羞恥心を感じることなく、自然体の自分を曝け出せることのできる環境や雰囲気」のことです。アメリカのGoogle社の調査で、心理的安全性は成功するチームの構築に最も重要なものである、との結果が出ました。
自律性を養う過程は、挑戦の連続です。失敗しても大丈夫、という若手がためらわずに挑戦できる環境を作り出すことで、彼らは積極的に学びや成長の機会を掴みにいけるようになるのです。
具体的な施策に落とすには
例えば、チームビルディング研修などがあります。心理的安全性を高めるためには、組織内の信頼関係が大前提になります。チームワークを構築する上で大切なことを学ぶことで、性格的な相性だけに左右されないチームを築くスキルを、身に着けることが出来ます。さらに、この研修を通して相手に居心地の良い環境を生み出す、効果的なコミュニケーション法も学ぶことが出来ます。
社員の行動指針を定める
自律型人材を採用・育成するには、「規律」の存在が重要になります。組織がどこを目指し行動しているのか、そしてその行動の源は何かという情報を開示します。そしてそれと同じものを従業員が持つことで、誰かがそこから外れてしまった際の判断基準を持つことができるからです。より客観的に自分や相手を見ることで、適切な判断ができたり正確なフィードバックを送り合うことが出来るのです。
具体的な施策に落とすには
例えば、先ほど1.でも触れた理念浸透研修があります。行動指針を明確にし、それを従業員に正確に伝える技術を学ぶことで、社内の共通認識をより深める事ができます。また、再度そのようなことを考えることで、改めて組織がそのように機能しているかどうか再確認する機会にもできます。
上記の5つの点が、自律型人材の育成と確保という点で大切になります。自律型人材の多い組織は、一見「自由で統制のない組織」と思われるかもしれませんが、理念やビジョン、指針や思考を整えることで、一人一人の長所が活かされるような仕組みを作り上げることが出来るようになるのです。
まとめ
AIの活躍の場が広がっていき、人口が減少している今、これから企業の中で自律型人材の採用・育成は重要だと考えられています。また、変化のスピードが速く、多種多様な状況に対応出来る、強い組織を作るためには自律性の醸成は必要不可欠です。そして自律型人材の採用や育成には、実は目に見えにくい理念やビジョンなどの、思考や価値観を整えることが必要になってくるのです。この記事を通して、個人の強みを活かした部下や新入社員の育成に少しでも貢献できれば幸いです。
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