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ジェンダーレスな働き方の実現~企業ができる育休復帰支援とは?~

ジェンダーレスな働き方の実現~企業ができる育休復帰支援とは?~

世界経済フォーラムが発表する「ジェンダー・ギャップ指数」の最新調査によると日本の順位は146か国中116位、先進国の中で最低レベルとも言われているのをご存知でしょうか?「教育」と「健康」の分野では世界トップクラスの値を維持しているのにも関わらず、総合順位を下げている原因が「政治」と「経済」の分野です。

性別関係なく個々の能力を発揮して働ける社会を目指す今、少子高齢化が進む日本において切っても切り離せない課題が「育児・介護との両立」です。

今回の記事では、「ジェンダーレスな働き方」の実現に注力する三井デザインテック株式会社様にて実施した研修の事例もご紹介しながら、企業や組織の中で、特に育休から復帰した社員が能力を発揮しやすい環境づくりには何が必要なのかを掘り下げていきます。

この記事のまとめ

  • スムーズな育休取得や職場復帰を支援することは、ライフサイクル全般にわたって誰もが働きやすい職場環境づくりや優秀な人材の確保に効果的である。
  • 性別による固定概念や性差に左右されない「ジェンダーレスな働き方」を実現するためには、上長を中心に各部署において個々の適性や能力が考慮された業務分担やフォロー体制の構築が重要である。
  • 支援にあたっては、育休取得前の段階から本人のキャリアの方向性や希望を把握するとともに、キャリア形成に役立つ社内制度や教育研修を用意していくことが求められている。
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「育休」を取り巻く社会の変化とは?

「育休」とは「育児休業」の略であり、原則子どもが1歳になる前の会社員が育児を目的とした休みを取得できる制度のことです。政府は出産・育児等による労働者の離職を防ぎ、男女ともに仕事と育児を両立しやすい体制づくりを目的として、2021年6月「育児・介護休業法」の改正を行いました1。ここでは改正のポイントを2つご紹介します。

「育児・介護休業法」の改正

まず1つ目のポイントとして、「産後パパ育休(出生時育児休業)」制度が新たに創設されました。これは出生後8週間以内に4週間を限度として2回に分けて取得できるものであり、1歳までの育児休業とは別に取得できる制度です。

2つ目のポイントとして、1歳までの育児休業を分割で取得できるようになりました。これまで育児休業は原則1回しか取得できませんでしたが、2022年10月からは男女ともにそれぞれ2回まで取得できるようになっています2

図1:育休分割取得の例

育休分割取得の例

政府は男性の育児休業取得率を2025年までに30%に引き上げることなどを目標に掲げ、ワークライフバランスの実現に取り組んでいます。

「育休復帰」を支援する企業のメリットとは?

ここまで育休を取り巻く社会の変化を見てきましたが、実際にこれらの制度を活用しながら働く社員が増えてくることが予測されます。企業として、組織として、そのような社員を積極的に支援することで得られる効果やメリットを確認しておきましょう。

優秀な人材の確保

出産を機に退職する女性の割合は年々減少傾向ですが、2021年の調査時点で23.6%の女性が出産や育児を理由とした退職をしていることが明らかになっています3。企業の人事部門や直属の上司が社員の育休取得や職場復帰に対して関心がないと、制度が整っていたとしても対象者が取得しづらいと感じたり、復帰意欲が削がれたりして退職に繋がってしまうケースがあります。組織全体で理解を深めておくことによって、対象者は安心して育休取得・職場復帰に向けてキャリアプランニングすることができ、人材の確保に繋がります。

働きやすい職場環境づくり

スムーズな育休取得や職場復帰を支援するということは、会社全体の誰もが働きやすい職場環境づくりにも直結しています。例えば社員一人に依存していた属人的な業務を改善したり、テレワークでもコミュニケーションが取りやすい体制を整備したりすることによって、育休対象者だけではなく周囲の社員の働きやすさも向上させることができます。

これからの時代に求められる「イクボス」とは?

育休復帰の支援を進めるにあたって、最も重要になるのは対象者が所属する部署の上長です。厚生労働省は理想的な上長の姿を「イクボス」と名付け、「職場で共に働くメンバーのワークライフバランスを考え、メンバーのキャリアと人生を応援しながら組織の業績結果を出すことができ、自らも仕事と私生活を楽しむことができる経営者・管理職」と定義づけています。イクボスプロジェクトを運営するNPO法人ファザーリング・ジャパンでは、イクボス10か条を定めてその普及を促進しています4。ぜひ以下の10か条について、5段階評価で現在の自身及び自社の状態をチェックしてみましょう。

イクボス10か条

5段階評価の付け方

1:まったくできていない 2:あまりできていない 3:どちらともいえない 4:概ねできている 5:非常によくできている

第1条:理解

現代の子育て事情を理解し、部下がライフに時間を割くことに理解を示していること。

第2条:ダイバーシティ

ライフに時間を割いている部下を差別(冷遇)せずダイバーシティな経営をしていること。

第3条:知識

ライフのための社内制度(育休制度など)や法律(労基法など)を知っていること。

第4条:組織浸透

管轄している組織(グループ)全体にライフを軽視せず積極的に時間を割くことを推奨し広めていること。

第5条:配慮

家族を伴う転勤や単身赴任などの部下のライフに大きく影響を及ぼす人事については、最大限の配慮をしていること。

第6条:業務

育休取得者などが出ても組織内の業務が滞りなく進むために、組織内の情報共有、チームワークの醸成、モバイルやクラウド化など可能な手段を講じていること。

第7条:時間捻出

部下がライフの時間を取りやすいよう、会議の削減、書類の削減、意思決定の迅速化、裁量型体制などを進めていること。

第8条:提言

自らの上司や人事部などに対して部下のライフを重視した経営をするよう提言していること。

第9条:有言実行

イクボスのいる組織や企業は業績も向上するということを実証し、社会に広める努力をしていること。

第10条:隗より始めよ

自らがワークライフバランスを重視し、人生を楽しんでいること。

いかがだったでしょうか?理想の状態とはわかっていても、いざ優先順位を高めて実践するには難しい項目が多かったのではないでしょうか?実際に多くの企業の上長が育休復帰後のメンバーとの関わりに悩みを抱えています。アチーブメントHRソリューションズではこのような課題解決に向けて研修やワークショップを実施しておりますので、ここからは実際の事例を用いて解決策を考えていきましょう。

導入事例:三井デザインテック株式会社

「くらしと社会の未来をつくる」をミッションとして、すべてのお客様の⽣活シーンをより豊かで潤いあるものにするべく、住宅・オフィス・ホテル・商業施設・医療施設などの多彩な空間デザインを手がける三井デザインテック株式会社様。社員一人ひとりのウェルビーイングの実現に向けた先進的な取り組みが社会から高い評価を受けています。

今回は、三井デザインテック株式会社様において、育休から復帰した社員が能力を発揮しやすい職場環境づくりを目的とした上長向け研修をご支援させていただきました。当日の研修内容や受講生である上長の変化についてお伝えいたします。

三井デザインテックが目指す働き方

三井デザインテック株式会社様ではD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)の考え方を積極的に推進しています。テーマは、性別による固定概念や性差に左右されない「ジェンダーレスな働き方」。男女比率が均衡していく傾向にある中、今まで以上のパフォーマンスを発揮していくためには、社員一人ひとりが今まで以上に能力を発揮することができ、個々の生産性を上げていくことができる環境が当然必要と考えていらっしゃいます。その一環として今回の研修を企画いたしました。

研修の目的と概要

今回の研修は、半日(4時間半)のワークショップ型で実施しました。対象者は育休から復帰したメンバーがいる各部署の上長約20名とし、研修目的と内容は以下の通りです。

<研修目的>

  • 育休復帰明けの時間的制約のある社員(短時間勤務者)が能力を発揮できる環境づくりを目指すための意識を啓蒙する。
  • 所属上長が業務割り振り等を見直す時間を取り、フォロー体制づくりに向けた具体的なアイディアと気づきを得る。

<研修内容>

  • 現状の共有(人事パート/グループワーク)
  • 育休復帰明けの時間的制約のある社員を取り巻く環境と求められる支援体制とは
  • 育休復帰明けの時間的制約のある社員への適切な業務分担方法とは
  • フォロー体制の構築(グループワーク)

受講による変化と気づき

今回の研修ではグループワークを豊富に盛り込み、各部署の上長同士に活発な意見交換を行っていただきました。研修冒頭では「短時間勤務者に突発的な業務対応は難しい」「本人もどのように会社に貢献しているのかがわかりにくい」といった悩みが挙げられていました。研修の中で受講生である上長の皆様がどのような気づきを得ていただいたのか、変化に着目して実際のお声をご紹介します。

  • 今までは正直深く考えることができておらず、安易な考え方だったと思います。今回の研修機会を通じて、自分が育休復帰したメンバーたちに配慮しているつもりで、本人の現状や意向を聞かずに業務割り振りしていたことを振り返りました。本人がどうしていきたいのかを話す時間を作らなければいけないと思います。
  • 今まではどこか上辺だけで本人の話を聞いていたなと反省しました。本人が何を求めていて、どこにモチベーションを感じているのかをしっかりと話して、理解を深めた上でフォローしていきたいと思いました。
  • 時短者であってもサポート業務だけではなく、色々なキャリア形成の方向性が考えられることに気づかされたので実践していきたいです。
  • 難易度と影響度がどちらも低い業務は社員のモチベーションを下げてしまうことを学び、業務分担を行う上では本人と対話し、合意していくことの重要性を感じました。

このように、多くの上長の皆様に意識変革が生じた研修となりました。

研修後、上長を中心に各部署においてさらに個々の適性や能力を考慮して業務分担やフォロー体制を検討することになっています。三井デザインテック様のさらなる発展とD&Iの実現に向けて、アチーブメントHRソリューションズでは支援を継続してまいります。

まとめ

今回の記事では実際の事例を含めて、企業ができる育休復帰支援について見てきました。育休復帰において気を付ける必要があるのが、時間的制約がある社員に単純な業務ばかりが集中することによってキャリア形成やモチベーションの維持が難しくなる現象です。これはマミートラックとも呼ばれてきました。今後は女性だけでなく、育休を取得せずに働き続ける男性と育休に入る男性との間で新たな課題が生まれてくる可能性もあるでしょう。企業側はこれらの社会の動きを見据えながら、社員一人ひとりが置かれた多様な環境を理解し、キャリア形成に役立つ社内制度や教育研修を用意していくことが求められています。明確な答えがない道のりの中で、専門的示唆が必要な場合にはぜひお気軽にご相談ください。

Footnotes

  1. 育児・介護休業法について, 厚生労働省
  2. 育児・介護休業法改正のポイント, 厚生労働省
  3. 今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会(第8回)
  4. NPO法人ファザーリング・ジャパン, イクボスプロジェクト

今回の記事では企業ができる育休復帰支援をご紹介し、性別に関わらず育休取得前からキャリアの方向性を話し合い、キャリア形成に役立つ社内制度や教育研修を整備することの重要性を述べてきました。

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