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リスキリングとは?~DX時代に必要なスキル習得方法と企業が取り組むべき人材育成~

リスキリングとは?~DX時代に必要なスキル習得方法と企業が取り組むべき人材育成~

ビジネス環境の急速な変化やITの進化に対応するため、従業員が持つスキルや知識を再教育・再開発する「リスキリング」の重要性が高まっています。しかしながら、何から取り組めばいいのかお悩みの方も多いのではないでしょうか。この記事では、リスキリングの定義や効果的な導入方法について詳しく解説します。

この記事のまとめ

  • リスキリングとは、新しい職業や今の職業での大幅な変化に適応するために必要なスキルを獲得することを言う。
  • 企業にとってリスキリングの取り組みは「自律型人材の育成」「エンゲージメントの向上」「採用コストの削減」といったメリットがある。
  • リスキリングを成功に導くには、社員がリスキリングに取り組む意義を腹落ちさせ、マインドシフトを促進する必要がある。
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リスキリングとは?

「リスキリング(Reskilling)」とは、企業が従業員に対して職業に必要なスキルを再教育・再開発することを指します。DXや脱炭素社会といった社会変化に対応できるよう、企業から従業員に提供される取り組みのひとつです。

2021年2月に経済産業省が発表した『リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―』によると「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義されています。 つまり、リスキリングは、これまで行ったことのない新たな事業・産業を伸ばすために、必要となるスキルを学び直すことをいいます。

スキルアップ(アップスキリング)とリスキリングの違い

リスキリングと似た言葉に「スキルアップ(アップスキリング)」があります。スキルアップとリスキリングの大きな違いは、職業・職務の変更を伴うかどうかです。

まず、スキルアップとは、訓練や学習などを通して現在持っている能力を向上させることです。例えば、経理パーソンがよりクオリティの高い仕事をするために簿記の資格を取得する、営業パーソンがITスキルを身につけて新規獲得を効率化するなどが挙げられます。新しいスキルを身につけて、すでに就いている職務で求められる能力や専門性を高めることを指すため、従業員の職業・職務が変更されることはありません。

一方でリスキリングとは、従業員を再開発・再教育し、成長分野への参入や別の職種への人材転換を図ることです。例えば、デジタル技術を活用して新規ビジネスの創出を狙うために行うDX教育や、受注率の改善を目的として営業パーソン向けに行うデジタル教育などが挙げられます。新しい職業・職務で今後求められるスキルを身につける取り組みのため、新たな職業や職務に就くことが前提です。

日本企業においてリスキリングが急がれる背景

今や日本企業においても、リスキリングは急務とされています。その背景にはグローバル化が進み、従来の仕事の存続が脅かされるほどの新技術が次々に開発されていることがあります。これにより、成長の見込める産業や仕事へ人的リソースを振り分けていく必要性が増加したのです。

また、2020年のダボス会議(世界経済フォーラムの年次総会)で行われた「リスキル革命」のセッションが世界的に注目を集めました。日本政府も同年よりリスキリングの重要性を謳っており、国内企業におけるリスキリング実施の機会を増やすよう努めています。

急速に変化するビジネス環境に適応していくためには、従業員にリスキリングを行い、常に新たなスキルや知識を習得し続ける必要があります。

ダボス会議で注目を浴びた「リスキル革命」

リスキリングという言葉が世界的に認知されるようになったきっかけは、2020年のダボス会議で行われた「リスキル革命」というセッションです。

同セッションにおいて「第4次産業革命により、数年で8,000万件の仕事が消失する一方で、9,700万件の新たな仕事が生まれる」と報告されました。続いて、この第4次産業革命への対応を目的として「2030年までに全世界で10億人により良い教育、スキル、仕事を提供する」と宣言されたことにより、リスキリングへの関心が高まったのです(一般社団日本能率協会『リスキル革命』~ダボス会議で「2030年までに10億人のリスキル」が提唱)。

DXに対応できるデジタル人材の育成が必要

近年IT化が加速し、これまで人が行っていた仕事がITやAIに置き換えられています。IT人材の不足が見込まれるため、DXに対応できる人材の育成が求められます。従来の産業・仕事に就いていた人材を、リスキリングにより新たな産業・仕事へ再配置していくことは、日本企業の持続的な成長に欠かせない要素といえるでしょう。

日本政府がリスキリングへの公的支援を表明している

日本政府は企業のリスキリングに対し、公的支援の姿勢を見せています。日本政府が投資する成長分野において、官民連携でのリスキリングが必要だと考えられているためです。

また、脱炭素やバイオ、AI関連など、新たなビジネスの隆興に応じた学び直しが求められていることも理由のひとつです。そのような背景から、2022年10月に岸田文雄首相は「個人のリスキリングの支援に5年で1兆円を投じる」と表明しました(日本経済新聞,リスキリング支援「5年で1兆円」岸田首相が所信表明)。

日本企業がリスキリングに取り組むメリット

リスキリングは、企業にとっても従業員にとってもメリットがある取り組みです。人材不足の対応や、従業員が新たなスキルを身につけようとする積極性や想像力などが育まれることで、企業の生産性向上にも期待できるでしょう。以下で、リスキリングに取り組む主な4つのメリットを紹介します。

人材不足に対応できる

リスキリングは、人材不足の解消に有用です。近年、事務や生産などの仕事が減る一方、DXをはじめとした専門・技術職の需要は増加の一途をたどっています。減少傾向にある仕事にITツールやAIを活用し、そこに従事していた人員にリスキリングを行うことで、別業務へ再配置できます。

従業員が新たなスキルを身につけることで、人材不足が発生している部門を補うことができ、企業は人材不足に対応しやすくなります。

市場の変化に対応できる自律型人材が育つ

社会変化に対応できる人材の育成も、リスキリングを行うメリットのひとつです。学びの習慣やスキル習得の方法を身につけることで、従業員の主体性が育ちます。

また、リスキリングは従業員が自らのキャリアや目標を考える良い機会となるため、自己責任や自己決定の意識も高まります。リスキリングの推進により、新しいスキルを進んで習得しようとする風土も生まれるでしょう。自発的に物事に取り組む姿勢が養われ、自律型人材の育成につながります。

従業員のエンゲージメントを向上できる

リスキリングに取り組むことで、従業員のエンゲージメント向上が期待できます。学び直しにより新たな仕事にチャレンジすることで自らの能力や可能性を広げられ、企業に対する従業員の帰属意識が高まります。また、新しい知識やスキルを活用して仕事に取り組めば、自信や達成感も得られるでしょう。

従来の業務をITツールやAIが対応するようになったとしても、リスキリングは従業員の技術的失業の防止につながる一手となります。

採用・育成コストを抑えられる

自社の従業員をリスキリングし、他業務に再配置することで、外部人材を採用・育成するコストを抑えられます。同等のスキルや知識を持った外部人材を採用する際は、採用や育成に時間的・経済的なコストがかかります。しかし、社内の業務に慣れた人材なら、新たな業務をスムーズに進めることが可能です。

リスキリングの効果的な5つの導入ステップ

企業がリスキリングを導入するにあたって、どのような内容を設計し、実施すればよいのでしょうか。ここでは、リスキリングを成功に導くための5つのステップを解説します。

1.経営戦略を基に必要な人材やスキルを特定する

まず、外部環境の状況に応じて、必要な人材やスキルを特定しましょう。新たにスタートしたい事業や市場の状況などによって、実施すべきリスキリングの項目は変わってきます。

この先、自社が売上を伸ばしたい市場はどこかを見定め、現状とのギャップを埋める人材またはスキルの育成が必要です。そのためには、自社の経営戦略に基づき「求める人物像」を明らかにすることが重要となります。

2.プログラムを策定する

必要な人材やスキルなどのゴールを定めたら、そこから逆算し、リスキリングのプログラムを策定しましょう。研修の具体的な内容をはじめ、身につけたスキルの実践を見据えたプログラムが必要となります。リスキリング後を見据え、プログラムの実施期間や予算まで検討するのが望ましいです。

また、リスキリングを組織力につなげるためには、本人の能動的な姿勢も欠かせません。他部門の社員と共に学び合う機会やフォロー体制も用意しましょう。

3.具体的なビジョンを示す

リスキリングでどのようなキャリアパスが描けるのか、従業員へ具体的なビジョンを示しましょう。従業員に取り組んでもらうためには、DXの重要性を当事者の視点で腹落ちさせる取り組みが必要です。従業員が自分自身の課題や成長のための目標を設定する自己分析の時間を設けたり、リスキリングを通じたキャリアパスの構築を支援したりするのも有効です。

従業員自らがキャリアの方向性を決め、そのために必要なスキルを学び直すからこそ、個人の成長を組織力につなげることが可能になります。

4.成功体験が得られる研修・実務を用意する

座学の研修のみならず、業務の現場で実践できる機会を用意しましょう。従業員がDXの活用に明るい見通しを持つためには、早期に成功体験を獲得させることが重要です。

実施している企業の中には「サンドボックス(砂場)」と呼ばれる従業員が安心してトライアルできる環境を用意しているところも多くあります。オンライン上で仕事を試せる環境や、社内インターンシップ制度などが活用できます。リスキリングで身につけたスキルを活かせる研修期間や、簡単な実務を用意することなども有効です。

5.プログラムの評価・見直しを行う

最後に、実施したプログラムを評価し、見直しを行います。リスキリングを実施後にアンケートや座談会を設けるなどして、従業員の満足度やスキル習得度を計りましょう。

実際にリスキリングを受けた従業員に、悩みや困ったことなどをヒアリングします。その内容を基にプログラムのメニューや実施方法などの改善を重ね、より従業員と組織が成長できるプログラムを作り上げましょう。

リスキリングの成功事例

早期からリスキリングに取り組み、成功している国内企業の事例を紹介します。リスキリングの導入・実施におけるポイントをつかんでください。

株式会社日立製作所

日立製作所(日立製作所,経営戦略に連動した人財戦略の実行)は、経営戦略のひとつに「デジタル人財の強化」を掲げ、全社的なリスキリングに取り組んでいる企業です。

同社は、2019年にDXに関する基礎知識から日立グループのデジタル事業までを理解できる『デジタルリテラシーエクササイズ』を提供しました。 グループ会社と連携して100のデジタル関連研修コースを用意し、国内グループ企業の全従業員16万人にDX研修を実施しました。その後、研修を実践に落とし込むための学習体験プラットフォームを導入し、全従業員が約1万6,000にも及ぶ講座を受講できる環境を整えています。

また、従業員のリスキリングを成功に導くため、部下を指導する立場である管理職向けのワークショップにも力を入れています。ワークショップを通じてDXに取り組む意義を腹落ちさせ、管理職のマインドシフトを促しているのです。

まとめ

リスキリングは、従業員が時代の変化によって必要となる新しいスキルや知識を身につけるための再開発・再教育です。ITの進化やAIの活用が進む中で、仕事のやり方や必要なスキルが変化していきます。そうした変化に対応し、持続的な成長を遂げるためにも、企業はリスキリングを行い、従業員のスキルを更新しなければなりません。

近年においては、日本政府も企業のリスキリングを後押しする流れにあります。この機会に自社に求められる人材やスキルを明確化し、具体的なプログラムを実施してみてはいかがでしょうか。

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