ビジネスシーンで直面する問題は、さまざまな場面で数多く存在します。問題をいざ解決しなければならない場面で「解決の方法がわからない」「解決の方法がわかっていても思った通りに解決できない」と悩んでいる方は多いのではないでしょうか。この記事では、問題解決方法について解説し、その手順や具体的な行動を紹介していきます。問題を効果的に解決したいときのために、ぜひ参考にしてみてください。
問題解決とは?基本のプロセスから解決手順まで解説
問題の定義
ビジネスにおける問題とは、予想していなかったアクシデントだけを指しているのではなく、課題といった意味も含んでいます。常に問題に取り組み続けて解決をし、新たな問題を見つけて成長することが必要です。問題は設定される背景によって大きく分けて3種類あると考えられます。
問題の種類
- 発生してしまった問題
- 今後発生する可能性のある問題
- 物事を実現するための問題
1つ目は、発生してしまった物事です。業務を進める中で自然と起こり、解決しなければ障害やトラブルが起きてしまう可能性がある問題を指します。例えば伝言を受けた人が伝達を忘れ、本来ならば担当者のもとへ伝わっているべき情報が伝わっていなかったなどのトラブルは、典型的な問題です。正常な状態と問題が起きている状態との差がはっきりわかるため、比較的簡単に発見できると考えられます。
2つ目は、今後発生する可能性のある問題です。実際に起こってしまわないよう事前に問題を解決し、発生を回避することを目指します。先ほど例に挙げたトラブルでいえば、伝言についてのルールが事前に決まっていないことや決まっていたとしても徹底されていないことが問題となります。ただし問題の兆候が見えていない段階で予想して気付く必要があるため、1つ目の問題と比べて認識することが難しいといえるでしょう。
3つ目の問題は、実現したい物事を設定することで生み出されます。2つ目の問題と同様、見つけ出さなければならないタイプの問題であり、意識的に探さなければ気付かないケースも多いです。例えば「売上を〇%上げる」などの目標を立て、その中にスムーズな伝達が必要と考えられた場合、伝言についてのルールを決めるという課題が掲げられるかもしれません。
このように一見同じような問題でも、設定される背景によって解決する意図が大きく変わるのです。
問題解決方法とは
問題の現状を把握し、あるべき状態にするまでのプロセスが問題解決方法です。問題に直面するとついつい目の前のことばかりに意識が行きやすいですが、問題解決方法をきちんと理解してプロセスを踏む意識を持つことで、最終的にどうあるべきかに目を向けられるようになります。
自ら問題を発見し解決する姿勢となるため、ビジネスパーソンにとって問題解決方法を知っておくことは大変重要です。実務の中で問題に直面したときにも、冷静に理想を見据えて対処できれば、問題解決能力が高い人材として評価されます。問題解決方法は、ビジネスの目標や課題を実現して成果に結びつける方法と言えます。
段階別の問題解決方法
ここで、段階別の問題解決方法をご紹介します。問題解決方法は、問題自体を把握するところから結果を検証するところまで、プロセスを数段階に分けて考えることが必要です。実行するためのポイントや、活用できるフレームワークなども併せてご紹介していきます。
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1. 解決すべき問題を明確にする
問題を解決するためには、まずは正しく認識して定義づける事が必要です。もしも問題を正しく認識していないと、解決まで時間や手間が掛かり、的外れな行動をとってしまうかもしれません。
実行するポイント
問題に取り組むときは、まずは解決すべき内容が
- 発生してしまった問題
- 今後発生する可能性のある問題
- 物事を実現するための問題
のうち、どの種類にあてはまるのかを確認するようにしてください。
発生してしまった問題であれば、事実の確認をしっかりと行い、原因を深く探る必要があります。今後発生する可能性のある問題であれば、実際に起きる可能性や起きる要素を確認し、解決しなければいけない本質の部分を明確にしなければなりません。目標設定など実現したい物事を設定することで生み出される問題であれば、現状と理想の差を明確にし、実現可能かどうかを考慮する必要があるでしょう。
活用できるフレームワーク
目標を明確にするには「As-Is/To-Be分析」がおすすめです。As-isとは現在の姿、To-beとはあるべき姿を表しています。
「As-Is/To-Be分析」
①まず初めにAs-isとTo-beの2つのフレームを作成し、To-beのフレーム内へあるべき姿の内容を書き出します。このとき、必要な予算や人材などのリソースは含まないように気をつけてください。数値化できない抽象的なものが含まれていても構いません。
②To-beが埋まったら、今度は現状をAs-isに記入します。内容はTo-beに記入したものと極力対応するようにしましょう。
③両方のフレームを見比べて内容の差が大きい部分が、解決していくべき問題になります。
As-Is/To-Be分析を行う場合、理想と現実のギャップを埋める解決手段も併せて検討すると、より効率的に問題解決方法を明確にできるではずです。
2. 問題の原因を分析する
次にどうして問題が発生してしまったのかを考えていきます。分析していく中で新たな要素が見つかるかもしれません。あらゆる可能性を考え、もっとも問題に関与する原因を探し出すことが大切です。また原因の分析は経験となり、似たような問題が再発した際の対処法として記録をストックできるので、問題解決方法の中でも欠かせない工程といえます。
実行するポイント
論理的に原因を探るためには、事実を認識し観察したうえで結論を導き出すことが必要です。基本的にできるだけ多くの情報から客観的に考えましょう。テクニックとして、情報をあえてしぼって考える場合もあります。全体の情報量が多すぎて、事実と仮説が混同してしまっているようなケースにおすすめです。この場合、誰かの主観が入った解釈や感想よりも事実を優先して残し、あくまでも客観的な原因の判断を行うようにしてください。
活用できるフレームワーク
あらゆるビジネスの基本ともなる「6W2H分析」ならば、問題全体像を整理して原因や本質を理解することができるでしょう。
「6W2H分析」
この分析では1つの問題に対して、When(いつ)/ Where(どこで)/ Who(だれが)/ Whom(だれに)/ What(なにを)/ Why(なぜ)/ How(どうやって)/ How much(いくらで) の8つのフレームを作成し、要素を埋めて分析します。すべてを埋めてみると、足りない項目や理想とかけ離れている項目が、問題の原因としてあぶり出されるばずです。
またトヨタ生産方式の一環として活用されていたことで有名な「なぜなぜ分析」もおすすめです。
「なぜなぜ分析」
このフレームワークでは発見した問題に対して、それはなぜか?と問いかけ、出てきた答えに対して同じ質問を繰り返します。5回繰り返して出てきたものを原因の本質とする方法です。
他には「ロジックツリー分析」を行えば、複数ある原因を比較して分析しやすくなるでしょう。
「ロジックツリー分析」
まず初めに問題を書き出し、その問題をさらに分解した要素をいくつか書きだします。問題と要素を線でつなげたら、書き出した要素自体を再び分解して、さらに下層の要素を書き出してください。ツリー状につなげていき、最下層となる要素を原因として考えます。
3. 問題を解決する手段を考える
問題を解決するためには、具体的な目標を設定することが必要です。まずは実際にどうなれば解決であるのかを決めてから、解決策を考えましょう。
問題解決の手段には、
- 原因を取り除く
- 新しいモデルを作る
という2つのアプローチがあります。目指している解決に対して、より実現しやすいアプローチを選ぶのがおすすめです。
実行するポイント
解決策は1つとは限りません。そのため考えられるすべての手段を明らかにして、その中から選択するようにしてください。1つの手段だけで解決することができず、複数の手段を組み合わせて解決策とする場合もあるでしょう。その場合、どの手段から先に実行していくのか優先順位を決めておくことで、解決までの道筋が見えやすくなるはずです。
気をつけなければならないのは、問題を打ち消しただけの内容を解決策としてしまうことです。この状況は「コインの裏返し」とも呼ばれており、物事を反対から見ただけで具体的な手段がないままとなっている状態です。例えば売り上げの低下を解消するために、「売り上げを伸ばす」ことを解決策としてしまっては、実際に何をすれば良いのかが分からないままになってしまうのではないでしょうか。このような手段のない解決策は避け、実行可能かつ具体的な解決策を挙げていくことが重要です。
活用できるフレームワーク
手段のリストアップには、再び「As is/To be分析」をおすすめします。理想と現実のギャップを解消するための手段を組み合わせて、より問題の本質に近い解決策を組み立てることができるでしょう。
複数の手段から実行するものを選ぶには、「コントロール可能/不可能」のフレームワークを活用して、要素を可視化するのも有効です。可能と不可能の2つのフレームを作成し、すべての要素を書き出します。ここでは解決のために必要な時間・人などのリソースも含めて考え、もっともコントロール可能な要素が多い手段を選んでください。
4. 解決策を実行する
取り組む解決策が決まったら、実行するために必要な工程を組み立てます。タスクを細かく設定して、スケジュールや分担などを決めていきましょう。具体的な計画を決めてから解決のための行動を開始します。
実行するポイント
実行の段階では、関わる人数が多ければ多いほどプロジェクトとしてのマネジメントが重要です。計画的にタスクを進められているか、コストはオーバーしそうにないかなど、細かく進捗を管理していくとより計画に沿った解決を実現できます。また効果の検証を正確にするため、実行した内容の記録を残しておくと良いでしょう。
活用できるフレームワーク
プロジェクトの実行に利用するフレームワークとしてよく利用されているものに、WBSやガントチャートなどが挙げられます。
WBS(Work Breakdown Structure:作業分解構成図)
WBSはタスクを細かく分けてデータ化し、担当者や期日、進捗状況を記載したリストです。WBSを活用すれば、全体の進行状況を一覧で確認できるようになります。
ガントチャート
ガントチャートはWBSに基づいて作られるグラフです。より直観的に進捗を把握できるようになるため、社内外をまたいだチームで問題解決するケースや、関係者が多く指示系統が複数に分かれているケースなどで活用すると良いでしょう。
5. 実施結果を検証する
問題が解決したら、予想していた結果と実際の状況を比較して、目標を達成できたかを判断します。達成できた場合もできなかった場合も、内容を分析して次の行動を決定することで、今後の問題解決力を高めていくことにつながるはずです。
実行するポイント
十分な効果がなかった場合には、再度その原因を究明して新たな解決策を探さなくてはなりません。解決策が有効に働くまでは、この繰り返しを続けていく必要があります。問題解決方法の効果を実感できた場合は、成功を今後につなげることが大切です。どうして成功したのかを分析して、新たな問題発生に備えておきましょう。
活用できるフレームワーク
結果の検証と再活用には「PDCAサイクル」のフレームワークをおすすめします。1950年代から提唱されている歴史ある手法で、活用している人や組織も多いです。
PDCAサイクル
PLAN(計画)/ DO(実行)/ CHECK(評価)/ ACTION(改善) の4つを定期的にチェックし、スパイラルアップしながら繰り返すことで内容の質を高めていきます。
問題解決方法を理解していないと起きること
問題解決方法を踏まえていない場合、どのようなことが起きてしまうのでしょうか。
傾向としては、
- 原因を探すだけで満足してしまう
- 考えずに行動する
- すぐに諦めてしまう
などの状況に陥ってしまう可能性があります。
原因を分析するだけでは最終的にあるべき状態に到達できないため、一向に問題が解決しません。プロセスを踏まずやみくもに行動してしまうケースでも、計画が頓挫してしまったり、偶然に解決できたとしても、他のケースで応用できなかったりする可能性が高いです。
また予定していた問題解決方法がうまく進まないために諦めてしまい、問題が改善できないままになってしまうこともあるでしょう。本来であればプロセスの内容を変更するだけで解決できたかもしれず、諦めてしまったことで解決のチャンスを逃しているかもしれません。
問題解決方法を実行するために必要な要素
問題解決方法を理解して実行するには、論理的な思考や周囲への興味関心、物事の経験から冷静に予測をする習慣などの姿勢が大切です。
論理的思考
まず問題を解決するためには、論理的な思考で計画を立てて実行する能力が必要になります。問題解決方法を組み立てて実行するには、適切かつ具体的な目標を定めなくてはなりません。設定した目標が適切でなければプロセスを進めるのが難しく、たとえ解決策は有効でも、思ったような結果が得られない可能性があります。
論理的思考とは、個々の物事を統一的な目線から判断し、筋道の通った考えを導き出す力のことです。ロジカルシンキングと呼ばれることもあり、物事の本質を見定める上でも必要になります。コミュニケーション能力を向上させるためにも必要な力なので、ビジネスだけでなく日常生活でも役立つでしょう。
周囲への興味関心
周囲への興味関心も重要です。すでに発生してしまった問題であれば問題の本質は自ずと浮き彫りになりますが、今後発生する可能性のある問題や目標設定により生み出される問題については、問題があること自体に比較的気づきずらいといえます。
発生する前の物事を問題として捉えるには、変化や傾向に気付く姿勢が大切です。そのため普段から周囲へ興味関心を持って、小さなことにも疑問を持ち、理想に近づくために思考を巡らせる考え方を癖づけることをおすすめします。
経験から予測をする習慣
物事を冷静に予測できれば、より多くの問題に気付けるはずです。過去の経験から起こりうる可能性を考え、必要に応じて応用できるようになることで問題解決方法を実行しやすくなるでしょう。経験値が少ない場合でも、経験者や専門家の意見を聞いて情報を集めていけば、予測の精度を上げてより効果的な問題解決方法を実行できるようになります。
問題解決方法を身につけましょう
ビジネス上のあらゆる問題は、解決方法をしっかりと踏まえて計画し、効果のある行動をとることが大切です。一度で即座に解決することが難しい問題もあるかもしれませんが、実践し続けることでだんだんと問題解決の精度が上がり、解決能力が養われていくでしょう。
問題解決方法を持ち合わせ、実務に生かせる人は、市場価値が高い人材となり得ます。またプライベートでも、解決方法を身につけることで人間的に大きく成長できるはずです。ぜひ今回ご紹介した問題解決方法を社内の人材教育に活用し、日頃からしっかりと問題に向き合う習慣を持ち、より本質的な原因を解決できる人材を育成しましょう。
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