派遣会社と雇用契約を結び、派遣先で業務にあたる社員が派遣社員です。実際に働く企業と直接雇用契約を結ぶ正社員とは、雇用主が異なります。そのため、正社員と派遣社員では見えている視界が異なる場合が多いとされています。派遣社員のモチベーションが低いように思える企業は少なくありません。ですが、派遣社員に働いてもらうのには確かなメリットがあるのは事実です。今回は、派遣社員のモチベーションが下がってしまう理由、そして上げる方法などを詳しく解説します。
派遣社員のモチベーションが下がる原因と高める方法を解説
派遣社員に働いてもらうメリットはコスト削減と人材不足解消
派遣社員のように非正規で働く人は、労働者全体の中で3分の1を占めるとされています。あえて派遣という働き方を選ぶ人もいる中で、企業側にはどのようなメリットがあるのでしょうか。派遣社員に働いてもらう第一のメリットに、コスト削減が挙げられます。正社員であれば、社員1人に対する社会保険や雇用保険、給与計算のような保険あるいは労務などについて相応のコストが発生します。しかし、派遣社員の場合はこれらを派遣会社が行いますので、正社員を1人雇うのと比べるとトータルで考えればコストを削減できます。 また、必要なタイミングで不足している人材を確保できるのも派遣社員を雇うメリットです。繁忙期や決算期には、どうしても人材不足に悩まされてしまうこともあるでしょう。必要なタイミングのみの人材確保として派遣社員の雇用は効果的な選択肢です。加えて、最初から専門的な知識やスキルを持った人材に絞ってスムーズに雇用できるのも、派遣社員ならではのメリットでしょう。
日本における派遣社員の状況
現在の日本における派遣社員の状況について、派遣先の企業の状況と合わせて見ていきましょう。厚生労働省の調査によれば、派遣社員として働く人たちのうち46.7%が2〜3ヵ月の期間で派遣契約を結んでいることがわかります。(平成29年派遣労働者実態調査の概況|厚生労働省(2021-09-25)) 派遣先における苦情についても調査がなされています。全体のうち17.6%の人たちが苦情を訴えています。比率としては女性のほうが高く、内容は人間関係やいじめ、パワハラといったものがもっとも多いです。さらに詳しい内容について、以下でご紹介します。
派遣社員の労働状況
厚生労働省の調査から、派遣社員の労働状況についてさらに詳しく見ていきましょう。まずは、年齢別の派遣社員の割合や派遣業務、技術について見ていきます。派遣社員のうち、もっとも多い年齢層は男女ともに40〜44歳です。次点を見てみると、男性であれば35〜39歳、女性であれば45〜49歳だとされています。
行っている派遣業務について見てみると、もっとも多いのは一般事務であることがわかります。次点に物の製造、事務用機器操作となっています。男女別で見てみると、男性の場合は物の製造がもっとも多い一方で、女性は一般事務がもっとも多いです。専門としている機器を使用するためには、相応の知識やスキルが必要です。その技術に関しては、半分以上の派遣社員が派遣先で身につけています。その他に、派遣先の教育訓練が挙げられています。先述のように、労働の契約期間は2〜3ヵ月がもっとも多いですが、次点には期間を定めていないとされています。
気になる賃金ですが、時間給で1,000〜1,250円未満に設定されているケースがもっとも多いです。次点には、それよりも高い1,250〜1,500円未満がきています。全体を踏まえると、平均賃金は1,366円です。
派遣先企業の状況
続いて派遣先企業の状況についても厚生労働省の調査をもとに見ていきましょう。[まず、派遣社員が就業している事業所は全体に対して12.7% だとされています。このうち、情報通信業が30.1%ともっとも高いです。次点に運送業や郵便業で21.6% です。必要なタイミングで迅速に人材を確保できるために派遣社員を就業させているケースがもっとも多く、73.1%にまで上ります。派遣社員には、一般事務に関する業務をしてもらうことが多く、次いで事務用機器の操作を任せているケースも多いです。
派遣契約期間は2〜3ヵ月がもっとも多いですが、通算で見てみると1年から3年以下が一番高いです。また、就業している派遣社員に対して、教育訓練を実施しているケースは多く、全体の59% にあたります。
派遣社員のモチベーションが下がる原因は人間関係や給料など
派遣社員は正社員と同じ場所で働くことが多いのに対し、雇用主が違うためにさまざまな点が異なってきます。この違いがいくつかの要因を生み出し、派遣社員のモチベーションの低下につながるとされています。派遣社員のモチベーションが下がる主な原因として、職場の人間関係や業務内容、給料、契約期間などが挙げられます。それぞれについて細かく見ていきましょう。
人間関係がうまくいかない
仕事に対するモチベーションは、働き続けるために欠かせません。特に派遣社員の場合、正社員との扱いの違いに悩まされるケースは少なくないのです。派遣社員を明るく迎え入れてくれる派遣先ならよいのですが、雇用形態を理由に除け者にされてしまうケースは珍しくありません。派遣社員だからと扱いの違いがいきすぎてしまい、ハラスメントにつながる場合もあります。派遣という働き方を選んだのは本人ですが、だからといって極端に派遣社員だからと扱い方を変えるのはあってはならない話です。
単純な業務内容が多くなりがち
雇用期間を定めて短期で即戦力となる人材が求められる派遣社員の場合、多くはメイン業務の補佐を任されることになります。すなわち、指示された単純な業務を淡々と進めるような業務がほとんどです。派遣社員としての働き方を選んだ以上、どういった業務内容になるか心構えをしているつもりでも、実際に就業してみればスキルアップや経験につながらないと感じるのも無理はありません。単純な業務内容では、その重要さを見出すのが難しいという点もあります。
給料が低い
派遣社員の給料は、基本的に時間給です。厚生労働省の調査から、時間給にして1,000〜1,250円であることがもっとも多いとされています。次点で1,250〜1,500円ですが、この金額ではアルバイトの給料とさほど変わりません。正社員と同じ場所で働いていたとしても、その金額は極端に異なります。そのうえ、この金額は正社員ほどの賞与や給料のアップが期待できません。20代で貰っていた給料が、50代になってもほとんど変わらないのです。派遣会社にマージンが入ってしまうために、派遣社員の給料はこのような金額で設定されています。給料の低さはモチベーションに影響する可能性があります。
継続した仕事ができない
派遣社員は、派遣会社と派遣先が契約を結んだ上で働きます。法的なルールがあるわけではありませんが、3ヵ月単位で契約を結ぶのが一般的とされています。その後は、双方の合意のもとで契約が更新されるかどうかが決まります。派遣社員としては、働きやすい職場に出会い、そこで長く働きたいと思われるかもしれません。ですが、継続して働くのが難しい仕組みとなっているのが派遣という働き方なのです。人によっては、短いスパンで派遣先を転々としている方もいるでしょう。職場がコロコロと変われば、それが精神的な疲労となることもあります。派遣という働き方を選んだ以上仕方ないですが、見逃せない問題です。
派遣社員のモチベーションを上げる方法
派遣社員のモチベーションは、先述のような理由で下がってしまうとされています。一方で、近年では働き方改革が進められている背景もあり、ワークライフバランスを重視して派遣という働き方を選ぶケースは珍しくありません。正社員との扱いの違いは、逆に言ってしまえば線引きが明確になっているので、上下関係で悩む必要がありません。また、単純な業務であるために残業や休日出勤が発生しづらいというメリットもあります。ですが、派遣を依頼した企業としては派遣社員にも一定のモチベーションを持って業務に向き合い、自社の生産性向上を目指していきたいという部分があるはずです。 そもそもの課題として仕事に意義や価値を感じてもらうことは非常に大切です。モチベーションの低下は、自分が行っている業務の意義や価値が感じられないために起きてしまうとされています。これは、派遣社員だけの問題ではありません。正社員やアルバイトでも同様にある問題です。ただ、雇用形態の違いによって特に注意すべき点がいくつかありますので、派遣社員に効果的な方法でモチベーションアップを図りましょう。
ここからは、派遣社員のモチベーションを上げる方法について詳しく紹介します。
契約内容の把握
まずは、契約内容について派遣を依頼する企業が正確に把握するようにしましょう。基本的に、派遣社員は契約で定められた範囲の仕事を担います。契約内容にそぐわない業務を依頼しないように、派遣を依頼する企業は全体で確認しておきましょう。その例として、受電対応が挙げられます。オフィス業界では、受電対応はすべての社員が当然のように行う業務です。しかし、派遣社員は契約内容に受電対応が含まれていないのであれば、対応してはいけませんしさせてもいけません。契約内容と実際の業務の相違は、不要な摩擦を生むので解消に努めましょう。
正社員と派遣社員を区別しない
正社員と派遣社員では、業務内容や雇用主が違うなど根本的な部分で相違点があります。ですが、だからといって接し方で区別してしまうのはまた別の話です。正社員も派遣社員も同じ人間です。適切な形で円滑なコミュニケーションを心がけることは、結果的に業務効率の向上にもつながってきます。派遣先での人間関係に関する問題は、珍しくありません。もし、今の段階で距離感があるのであれば、問題の解消に向けて歩み寄る努力をするべきでしょう。2018年に公布された「働き方改革関連法」においても同一労働同一賃金として、正社員と正社員以外の格差是正が記されていることから、正社員と派遣社員との差を生まないようにしましょう。
入社時研修で必要なスキルを身に着けてもらう
派遣社員の雇用は、必要なタイミングで人材を確保できる選択肢として企業側は検討します。基本的にスキルや知識は派遣先で身につけるものだとしていますが、企業側としては単純な業務を行ってくれる即戦力を求めている部分もあります。契約期間が決まっている派遣社員に対して、研修を省くことが多いようです。しかし、研修は単にスキルや知識を身につけるだけでなく、どのような会社なのかを知ってもらい距離を縮める場にもなり得ます。どれだけ短期間の派遣だとしても、研修を実施することをおすすめします。また、ランチミーティングを行ってもよいでしょう。合わせて、業務上の目標について設定してみることもおすすめします。
定期的な面談でコミュニケーションを図る
派遣社員とのコミュニケーションや価値観の共有のために、定期的な面談を行ってみるとよいでしょう。業務の意義や価値をしっかりと伝え、目標を設定したり仕事への評価を直接伝えたりすることで、自分が行っている業務の価値が実感できるようになるはずです。また、業務を行うことでのスキルや経験の習得といったメリットについても説明してみるのもおすすめ。単にルーティンワークといっても、派遣先にはさまざまな部署や職種があります。その場で働くことで新たに身につくことを見つければ、派遣社員にとって業務へのモチベーションにつながるかもしれません。
まとめ
派遣社員のモチベーションを下げてしまったり上がったりする要因は雇用する側にあるかもしれませんが、最終的には本人の人間性による部分もあります。雇用する側は、モチベーションを下げてしまわないように積極的にアプローチし、歩み寄ることが大切です。ワークライフバランスを重視する世代が増えてくる中で、仕事に対するやりがいやその業務を行う意味を見出すのは大切な課題です。派遣社員の雇用は、企業側としてもメリットが大きいですので、適切なアプローチでしっかりと成長していける環境づくりを心がけましょう。
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