職掌とは、労働内容が類似した職務や職種をグループ分けしたもので、職務分類の最も大まかな分け方のことを言います。
職掌は、人事制度を設計する際の重要な基本用語ですが、近年改めてその在り方を問われています。少子高齢化が進み、労働力人口が減少している中、企業にとって従業員の離職率を最小限に留めることは益々重要になっています。従業員が不満を抱かず、長く勤めるようにするには、仕事内容、同僚との関係、待遇など様々な要素がありますが、適正な評価・報酬制度は、公平性と将来性からも従業員の満足感を大きく左右すると言えます。また評価や報酬制度にも、年功主義、能力主義、職務主義、成果主義、企業業績と連動するなど様々な制度がありますが、今回は基本に返って、職掌について解説していきます。
職掌とは何か?いまさら聞けない、人事の基本用語を解説!
職掌とは?
職掌とは、労働内容が類似した職務や職種をグループ分けしたもので、職務分類の最も大まかな分け方のことを言います。例えば、経理、営業、品質管理、接客をしている人の職掌はどんなものになるでしょうか?
職掌の分類として、大きく分けて以下の2パターンがあります。
労働内容の類似による分類
これは職務の性質機能の類似による職掌の分類方法です。企業によって大きく2つに分類にしている場合と複数に分類している場合があります。
2つに分類している場合は、「事務職・技術職」で分類した事務職掌・技術職掌、また「事務作業・現場作業」で区分した事務職掌・作業職掌などがあります。
例えばこの場合、経理は事務職掌にあたり、財務、総務、人事、システム開発、監査などと同じように、主に定型的、処理的、補助的な事務業務およびスタッフ的業務、システム開発、通信情報処理などの業務を行う職種群などの一部となります。
複数に職掌を分けている場合は、営業職掌、事務職掌、制作職掌、技術職掌、サービス職掌などがあります。その場合、営業は当然、営業職掌にあたり、営業に直接関連する部門において、商品の販売、市場の開拓、企画立案、代金回収等の業務を行う職業群の一部となります。以上より、職掌という言葉を用いてはいるものの、一般的な言葉でいう、営業職、事務職、制作職、技術職、サービス職などを指していると考えてよいでしょう。
複線型雇用管理制度による分類
複合型雇用管理制度による分類とは、いわゆる「総合職・一般職」といった、役割の違いによる職掌です。この場合、例えば同じ品質管理に携わっている場合でも、総合職は業務の中枢を担う、より責任のある仕事を任されると共に、将来の幹部候補でもあります。それに対して同じ部門でも一般職では、総合職を補佐するような定型的な事務作業などの業務に携わります。
しかし、昭和61年の男女雇用機会均等法施行を契機に、この複線型雇用管理制度を採用する企業が多くなりました。しかしながら、平成28年の男女雇用機会均等法の更なる改正に伴い、総合職と一般職というコース別人事を廃止する動きもあります。
いずれの分類方法においても、職の「質」の違いごとにまとめたのが職掌と言えます。
職掌と職種、職群の違いとは?
職掌は、先に述べたように、職務を分類する際の一番大きな区分になります。ですので、職掌は職種よりも広い概念になります。また、職掌が仕事内容の類似しているものをまとめて扱うのに対し、職種は企業の中で総務、経理、営業というように必要とする知識の類似性・共通性のある仕事を分類したものです。つまり、一般的に部門を構成しているのが職種と言えます。一方、職群は類似した能力で分類しています。例えば、「管理職群・一般職群」や「営業職群・管理部門職群」などがありますが、企業によってもその定義や概念は異なります。
職掌を人事制度で活用する方法とは?
職掌は人事制度の設計において広く活用されています。例えば、職掌の特性に応じて、採用、配置、能力開発、昇進昇格の内容を決定し管理することが出来ます。
また、人事制度において、職掌と組み合わせて設計されるのが等級です。(図1)職掌がどのような種類の仕事を出来るのかを表した横の分類であるのに対して、等級はどのくらい高い能力を持つのかを表す縦のクラス分けになります。例えば、リーダーを5等級以上、課長クラスを7等級以上、部長クラスを8等級以上といったように設計することで、職掌が異なっても、統一の基準で把握することが出来ると同時に、等級レベルを比較することが出来ます。このことで、部署移動があった場合でも、処遇の変動を防ぐことが出来ます。
しかし現実的には、例えば事務職掌と技術職掌など、職掌によってある一定の能力をつけるまでにかかる年数は異なります。そこで各等級には、年功序列的でもありますが、標準留年数が設けられているのが一般的です。
人事制度では、等級が上がっていくことでどのような変化があるのかを示すので、その際に職掌がきちんと区分されていないと、自分の仕事において等級を上げていくためにはどのようなことが必要なのかがわかりません。職掌と等級が合わせて明確になっていることで、社員にとって能力を高める計画を立てやすくなり、モチベーションにもつながっていくのです。
まとめ
このように、職掌は人事において管理を効率化するだけでなく、等級制度と効果的に組み合わせることで、社員のモチベーションを高める人事制度となります。
近年では、男女雇用機会均等法施行や改正など、時代の流れと共に職掌の分類の仕方も変化して来ました。職種が多様化し、職場でのダイバーシティが進む中、職掌というマクロな捉え方は、昇進昇格制度を明確化し、従業員のモチベーションの向上を図る解決策として、新たな在り方を今後求められるかもしれません。
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